5月9日(金) |
昼食後、綱領草案の学習(恐慌とは何か 第2回) |
【I】大恐慌と世界革命時勢の成熟(『現代革命への挑戦』(上)第4章) |
1 世界は大失業・戦争と革命の時代に突入した 2 新自由主義の全面崩壊が始まった 3 大恐慌は世界革命の前夜 ①資本主義と恐慌 ▼労働力の商品化のもつ矛盾 ▼景気循環過程と恐慌の本質 ▼恐慌の歴史的現実形態 ②現在の世界大恐慌 ③大恐慌はこれからもっと激化する ④脱落日帝の大破産 4 プロレタリア革命こそ唯一の解決 |
【Ⅱ】 資本主義と恐慌(『現代革命への挑戦』(190~197頁) |
▼資本主義の基本矛盾 ・資本家的商品経済は、資本自ら商品として生産することのできない労働力を商品化することによって成立している。 ・労働者は物ではない 人間はいかに商品経済的に人的資源と見なされるにしても労働者は人間であって、資源ではない。単なる物としてあるわけではないし、また単なる者として生産されるわけにはゆかない。資本もこれを物として自ら生産することは出来ないし、自然のように外部から与えられるものではない。労働需要の過不足自身が資本主義に内在的な矛盾をなす。 ▽資本主義に特有な人口法則 資本は再生産過程における生産力の増進によって、いねば資本家社会的に労働人口を形成する機構を有している。 労働の生産力の増進は一定量の生産手段を使用する労働力の量を減少させる。 労働力は、他の生産物にように価格が騰貴したからといって生産の増加がおこなわれるとか、あるいは価格が下落しだからといってその生産を減少させることはできない。 しかし、生産力の増進によって相対的過剰人口を形成し、その需要を充足する。 これを、周期的恐慌によって実現する。ここに資本主義の限界がある。 ▼恐慌は資本主義(経済)に必然的かつ特有な現象である。 一方に、売れないため在庫として積み上がる大量の商品があり、他方はその商品を買うことができずに生活に困窮する膨大な失業者群が存在する。この両者が相ならんで併存するところに、資本主義の根本的な矛盾と危機がしめされている。 ・恐慌は、資本主義社会に内在する矛盾の、資本主義に特有の現実的解決形式である。 しかし、その矛盾を根本的に解決するものではない。 したがって、それはさらにより大なる矛盾としてあらわれる解決方法であって、繰り返す性質をもち、そこに必然性としての法則性が現れる。 ・自然法則のごとき作用をしながら、資本主義社会において、一定の発展段階においてのみ典型的に現れる。 ・恐慌の根拠をなす資本主義社会の基本矛盾(労働力の商品化)は、資本主義を一歴史的社会とするものであって、発生と同時にその終末を示すものである。 |
【Ⅲ】本源的蓄積 |
●資本主義的蓄積に先行する蓄積 ・資本主義的生産は、大量の資本と自由な労働力とがあることを前提とする。 資本家 貨幣や生産手段や生活手段の所有者 労働者 二重の意味で自由な労働者 身分からの自由(自分の労働力を売る自由=奴隷ではない) 生産手段からの自由(生産手段をもっていない=餓死する自由) ・封建社会の解体が「自由な労働者」をもたらした ①農奴的隷属(農民)や同職組合強制(職人)からの生産者の解放 ②すべての生産手段が奪い取られ、労働力を売る以外に生きられない 血に染まり火と燃える人類史の産物 ・労働者の隷属状態が、封建的搾取から資本主義的搾取へと転化 画期をなすのは、人間の大群が突然暴力的に土地から引き離されて無保護な労働者として労働市場に投げ出される瞬間(=農民からの土地収奪) ●農村民からの土地の収奪 ・イギリスでは農奴制は14世紀の終わり頃には事実上なくなり、人口の非常な多数が自由な自営農民からなっていた。 ・自由な借地農業者 ・農業の賃労働者(農業プロレタリアート) 賃金の他に4エーカー(約1.6ヘクタール)の耕地と小屋の貸与、共同地の用益権 ・封建大領主は、農民を土地から暴力的に駆逐し、また農民の共同地を横領して、労働者を作り出した。(囲い込み=エンクロージャー) ・その直接の動力は、羊毛工業の発達による羊毛価格の騰貴。(16世紀) ※トマス・モア(空想的社会主義者)の『ユートピア』では「羊が人間を食い尽くす」という奇妙な国のことを語っている。 ・サザランド女公の「清掃」 「住民が15、000人に減っていた全州を牧羊場にかえてしまうことにした。1814年から1820年まで、この15、000人の住民、約3000戸の家族は、組織的に追い立てられて根絶やしにされてしまった。彼らの村落は残らずとりこわされて焼き払われ、彼らの耕地はすべて牧場にかえられた。兵士がその執行を命ぜられ、土着民と衝突した。一老婆は小屋を去ることを拒んで、その火炎に包まれて焼け死んだ。このようにして女公は、いつともない昔から氏族のものになっていた794、000エーカーの土地をわがものとした」 ・最後に牧羊場の一部は狩猟場に再転化される 狩猟場にすれば、多くの場合牧羊場とは比べものにならないほど有利であった ・労働者階級の父祖に対する血の立法(15世紀末~16世紀) 老齢で労働能力のない乞食は乞食免許を与えられる 健強な浮浪人にはむち打ちと拘禁、出生地か最近3年間の居住地で「仕事につく」義務 再犯はむち打ちと耳半分切り取り 3回目 公共の敵として死刑 ・労働を拒むものは、彼を怠惰者として告発した人の奴隷になる 奴隷は14日間仕事を離れれば終身奴隷に 逃亡3回目は、国に対する反逆者として死刑 ・16歳から60歳までの強健な男で職業についていないものはすべてガリー船(奴隷や囚人に漕がせる大型船)に送られる(17世紀フランス) ・法定賃金より高く支払うことは禁止(最低賃金法はない=「最高賃金法」) 高く支払うものは禁固10日 高く受け取るものは禁固21日 ・団結禁止法 重罰 14世紀~1825年まで 1825年に部分解除 1871年労働組合の法的承認 ・教会領の横領、国有地の詐欺的な譲渡、共同地の盗奪、横領と容赦ない暴行によって行われた封建的所有や氏族的所有の近代的私有への転化、これらはみなそれぞれ本源的蓄積の牧歌的な方法だった。 それらは、資本主義的農業のために無保護なプロレタリアートを供給した。 |
【IV】歴史的存在としての資本主義 ・資本主義的商品経済は、人類の歴史と共に始まるものではなく、人類の歴史からいえば極最近の、17.18世紀以後に成立したものである。 ・労働者と機械との闘争 ラダイト運動(1811-1813年のイギリス労働者の機械打ち壊し運動) ・労働手段が労働者を打ち壊す 機械設備は、それ自体として見れば労働時間を短縮するが資本主義的に使用されれると労働日を延長する。 それ自体としては労働を軽減するが、資本主義的に使用されるとその強度を高める。 ・恐慌が労働者階級の最高部に及ぼす影響 1866年の新聞からの引用 「昨日は首都の一部で一つの恐ろしい光景が展開された。イースト・エンドの数千の失業者が、黒色の弔旗を持って大群をなして行進したわけではないが、人波は十分威圧的なものだった。これらの人々がどんなに苦しんでいるかをおぼえておこう。彼らは飢えて死にかかっている。これは簡単な恐ろしい事実だ。彼らは四万もいる。……われわれの目の前で、このすばらしい首都の一地区で、世界に類のない莫大な富の蓄積のすぐそばで、四万の人が飢えて死にかかっているのだ! このような何千かの人々は今では他の地区にも侵入している。 いつでも飢え死ににかかっている彼らはわれわれの耳に苦痛の叫びを聞かせ、天に向かって叫び、彼らの惨苦にたたかれた住居から、われわれに向かって、彼らには仕事も見つからないし、乞食をしてもむだだということを語っている。地方の救貧税納付義務者たちは、教区の要求する負担のために彼ら自身が受給貧民になりかかるまでに追い詰められている」 (『スタンダード』1 8 6 7.4.5) 「マンチェスターの衛生官ドクター・リーが確認したところでは、同市では有産階級の平均寿命は38年であるが、労働者階級の平均寿命はたった17年である。 リバプールでは、前者のそれは35年、後者のそれは15年である。だから、特権階級は、彼らよりも恵まれていない仲間の市民にくらべて、二倍以上の寿命をもっているということになる」(『マンチェスター・ガーディアン』1 8 7 5.1.15) ・イギリスのインド支配 イギリスの東インド会社は取引の独占、商品の強制買い上げ、過酷な増税で、税収入を急増させた。ベンガル(今のバングラディシュあたり)の綿織物業に従事していた数万の職工たちは、強制的に東インド会社に登録させられ、自分の製品を市場価格よりも50%も低い価格で引き渡すことを義務づけられた。そのため、職工だらけ奴隷に等しい状況におかれ、多くの職工たちが機織りに不可欠な自分の指を切断してこの苦しみから逃れようとした。 ・イギリスの木綿機械のもたらしたもの 「この窮乏は、商業史上ほとんどその類例を見ない。木綿職工の骨は、インドの平原を真っ白にしている」(1834-1835年東インド総督) |
●資本主義的蓄積の歴史的傾向 ・資本の歴史的生成は、ただ直接的生産者の収奪、すなわち自分の労働にもとづく私有の解消でしかない。 直接的生産者の収奪は、何ものをも容赦しない野蛮さで、最も恥知らずで汚らしくて卑しくて憎たらしい欲情の衝動によって、行われる。 自分の労働によって得た私有は、資本主義的私有によって駆逐される。 ・少数の資本家による多数の資本家の収奪と手を携えて、ますます大きくなる規模での労働過程の協業的形態、科学の意識的な技術的応用、土地の計画的利用、共同的にしか使用しえない労働手段への労働手段の転化、結合的社会的労働の生産手段としての使用によるすべての生産手段の節約、世界市場のあみのなかへの世界各国民の組み入れが発展し、従ってまた資本主義体制の国際的性格が発展する。 ・いっさいの利益を横領し独占する大資本家の数が絶えず減ってゆくのにつれて、貧困、抑圧、隷属、堕落、搾取はますます増大してゆくが、しかしまた、絶えず膨張しながら資本主義的生産過程そのものの機構によって訓練され組織されれ労働者階級の反抗も増大してゆく。 資本独占は、それとともに開花し、それのもとで開花したこの生産様式の桎梏となる。 そこで外皮は爆破される。資本主義的私有の最後の鐘が鳴る。収奪者が収奪される。 前には、少数の横領者による民衆の収奪が行われたのであるが、今度は民衆による少数の横領者の収奪が行われるのである。 ●『共産党宣言』 。「工業の進歩は、〔資本の論理に対して〕無意志・無抵抗なブルジョアジーによってになわれているが、競争による労働者の孤立化ではなく、組織による労働者の革命的団結をもたらす。こうして大工業の発展とともに、ブルジョアジーの足元から、「かれらが生産し、その生産物を取得していた土台そのものが取り払われる。ブルジョアジーはなによりも、自分たち自身の墓堀人を生み出す。ブルジョアジーの没落とプロレタリアートの勝利は、いずれも不可避である。」 |
【V】恐慌の現実形態 |
▼古典的な恐慌 恐慌は、資本主義の自由主義段階(19世紀の20年代から60年代)にイギリスを中心にして繰り返された、好況━恐慌━不況という周期的な景気循環過程において、景気拡大が過熱化していく好況の末期に発生する。 ・金融恐慌 産業資本家間の遊休資金の相互的融通や、銀行によって貸し付けられた資金の回収不能が、急性的に、時を同じくして、社会的に広範囲に生ずる。 ①賃金の騰貴によって利潤率が低下する ②他方での利子率の高騰とが衝突する 恐慌は必ず「金融恐慌」という形態をとる ・核心問題は労働力の商品化を基礎とした、資本の過剰蓄積 ▼景気循環過程と恐慌の本質 ・資本主義の典型的な恐慌 1820年代~1860年代にかけて、イギリスを中心にほぼ10年周期で5度の<好況、恐慌、不況>という周期的景気循環を法則的に繰り返し、発展した。 ※1825年、36年、47年、57年、66年━ほぼ10年周期で繰り返された典型的恐慌 ▼好況━恐慌━不況の景気循環 ・元来、資本蓄積には、資本の構成の変化を伴うことなく、同じ構成をもって量的に増大するという面と、資本量の増大がその構成をも変化させるものとして行われるという二面がある。 資本の有機的構成の高度化は、不断に行われるのではない。既に投下された資本は、一定の期間の後でなければその固定資本を更新するわけにはゆかない。 好況期の蓄積は、資本構成の変化のない蓄積でありながら、労働者の絶対数を増加し資本蓄積を増進する 不況期は利潤の獲得が困難であり、生産方法の改善に異常な努力が払われ、資本の有機的構成を高度化して次の循環過程を準備する ▽好況 ・先立つ不況期に新たに更新された既存の生産設備・生産方法で、資本の積極的な生産拡大と増殖・蓄積が行われる。 ・不況期に形成された相対的過剰人口(産業予備軍)が順次動員され、雇用も拡大する。 ・好況期には、生産設備の革新ではなく既存の生産関係のもとでの生産を量的に拡大する。 ・労働力がどんどん吸収され、一方で賃金が騰貴し、他方で利潤が低下する。 ・景気の過熱化 賃金騰貴と利潤の低下が起こっても、個々の資本は出来る限り資本量の増加による利潤量の増加につとめる(薄利多売)。資本は社会的に過剰となりつつあるときも、個々の資本は自らその蓄積を制限することはできないが、貸付資本がこれを規制する。 ▽恐慌 ・資本の蓄積の増進に伴う利潤率の低下 資本100億 利潤10% 利益10億 資本120億 8% 9.6億 利潤量が資本の増加に反して減少すれば、資本が過剰である 労働者にとって生産手段ないし消費資料が絶対的に過剰というわけではない。資本として有利に投じられないという過剰である。労働者が自らの生産手段を使用して生産し、消費資料を自己の生活に使用するのであれば何ら過剰ではない。 ・豊富の中の貧困 生産過剰とは、多数の人びとの欲望に対して過剰なのではない。極めて限られた程度の欲望の満足も与えられないで生活資料が過剰になる。一定の与えられた資本家と労働者との関係では、再生産が継続できなくなっている。資本は自らの価値関係を破壊し、再編成することなくしては打開できない行き詰まりである。 ・利潤率と利子率の衝突 賃金の上昇によって利潤率が低下する。 資金需要の高まりから利子率が上昇する。 信用関係は突如として破綻を始める。 銀行は貸し付け資金の回収不能に、産業資本や商業資本は支払い不能に陥る。 倒産が始まり、銀行の取り付けが起こる。 ・資本価値の破壊 一方に売れなくて利潤も生まない膨大な生産物(商品)を、他方には過剰な商品(生活手段)を買うこともできない大量の失業者群を生み出しつつ、過剰資本を現実的に破壊・整理する。 ▽不況 ・不況は、19世紀中葉の典型的な恐慌では4~6年続く。 ・資本家の友愛 「万事が順調であるかぎりは、資本家階級の実践的友愛として作用するのであって、彼らは各人の投資の大きさに比例して協同の獲物を協同的に分配する。だが問題が利潤の分配ではなく損失の分配となるや否や、各人はできるだけ自分の損失分を少なくして他人の肩にかけようとする。損失は資本家階級としては不可避である。だが、さて各人がどれだけの損失を負担すべきかということは、力と知能の問題となるのであって、この場合、敵対する兄弟間の戦闘に転化する」(『資本論』) ・利潤率の低下は利子率の低下を伴う 不況期においては、資金の供給は減少するが、資金の需要の減退のために利子率は低下する ・生産手段の価格の低落、賃金の切り下げ、労働強化と生産手段の節約、貸付利子率の低下は、それ自身では資本の再生産過程を回復させない。 生産過程拡おける生産方法の改善による生産費の低下に脱却の道を求める。 ・産業資本は生産方法の更新によって資本の有機的構成を高度化し、産業予備軍を吸収し、資本家と労働者との新たな関係を形成し、相対的剰余価値の生産(搾取)に全力をあげる。 ・これが次の好況へと転化する。 ※綿糸の好況期の平均価格の低落傾向 (1ポンドあたり) 1822-5年 23.33(ペンス) 1832-6年 16.08 1843-7年 12.01 1852-7年 10.99 1862-6年 23.68 アメリカの南北戦争による騰貴 ▼恐慌の歴史的な現実形態 ▽重商主義段階の恐慌 新興企業、海外貿易の株式投機の破綻 偶然的・外生的・局部的恐慌 ▽産業資本を軸にした19世紀中葉の自由主義段階の恐慌 資本主義が産業革命によってイギリスを中心に歴史的に確立し、発展期に入った状況下での、必然的で内生的な一定の法則性をもった、資本主義の基本矛盾の爆発としての恐慌 ▽1873年以降の恐慌 ・30年近く続いた「世紀末大不況」 不況の慢性化の傾向 ▽帝国主義段階 ・資本主義が独占と金融資本の形成を軸にして帝国主義段階(爛熟期・没落期の死滅しつつある資本主義)へと歴史的に移行しつつあることを示す。 イギリスに対抗して後発資本主義としてのドイツやアメリカが台頭 綿工業から石炭・鉄鋼などの重工業と株式会社制度の導入 生産の集積と独占の形成、銀行資本の新しい役割を媒介とした金融資本の確立 ・体制内的に解決することのできない過剰資本・過剰生産力 固定資本設備の過剰、資本主義的な生産能力の過剰、労働力の慢性的過剰 ・世界市場と世界の再分割戦争に突入 英仏などの先発資本主義が全世界を植民地として分割支配しているなかで、独・来・日など後発資本主義が再分割戦を挑む 1898年米西(アメリカ・スペイン)戦争 1899~1902年(ボーア)戦争(イギリスと南アフリカのボーア人との戦争) 1904~1905年日露戦争 ・帝国主義段階の恐慌は、基軸帝国主義・中心国の没落と一体となって生起する 過剰資本・過剰生産力の歴史的累積、基軸帝国主義の没落による分裂が相乗化して、帝国主義の矛盾が世界大恐慌となって爆発する ▽ザ・グレート・ディプレッション ・19世紀末の長期大不況 → 第1次世界大戦 ・1929年の大恐慌~1930年代の大不況 → 第2次世界大戦 ・2007年以降の世界金融大恐慌の展開 全世界的な過剰資本・過剰生産力は経済的には解決できず、世界戦争への突入によって暴力的に解消=破壊されるしかなかった。 大恐慌━大失業━争闘戦の軍事化━プロレタリア世界革命へ |